ストレンジ・フルーツ 全体感想

盛大にねたばれしておりますので、ご注意くださいませー。


舞台は校舎の門を入ったちょっとした広場。奥に門、上手・下手に校舎、下手の校舎の入り口手前に木があるのだけど、その枝に自殺するための輪っかがかけてあって、それ見た瞬間、あーやっぱりそっち系かーーと思いました。
ざっくり話しの流れをメモ。
・最初は千葉がカナの自殺を見守るシーン。
<OP映像>出演者のアップ写真と名前、沢山のポラロイド写真が次々表示されていく。BGMがチョッパーベースの利いたアップテンポなロックでなんだかテナーぽかったです。

・アートプロジェクト最終日。かつてのアートプロジェクトメンバーがカナの葬儀(最後の発表会)に駆けつけ、千葉の作り上げたストレンジフルーツを見るシーン。森下か晴美がストレンジフルーツになったカナを見て「綺麗」とつぶやき、千葉が回していたカメラのところへ行って「カット!・・・OK」と言ってこの場面は終わる。

<チャプター4の映像>カナと千葉だけになってしまった校舎内でのシーン。ナイフを持って校内をうろつく千葉。すべて逆再生になっている。教室でパソコンを操作する千葉を見つめるカナ。

・1月1日、ピクニックと称する作品発表会のシーン。森下の作品を否定するクラマと千葉。逆にカナの写真は絶賛される。コンセプトしか提出できなかったハリー。ハリーのアイデアを独り占めにしハリーを裏切る千葉。森下とハリーが失格。千葉に「助けて」と叫ぶカナ。

<チャプター3の映像>教室にいる千葉、カナ、ハリー、森下。黒板にハリーが書いた図式を見て討論している千葉とハリー。ミシンを踏む森下。カメラをいじっているカナ。

・10月9日ピクニック前日。自分の過去を美晴に話すカナ。海老沢に騙され関係を持ってしまった美晴は妊娠してしまう。そんな美晴が校舎の足場から転落し骨折。美晴に思いを寄せるアキオは逆上して海老沢を切りつける。病院に行かねばならない美晴を抱き上げ連れて行くアキオ。美晴とアキオが失格となる。

<チャプター2の映像>教室で楽しそうに作品作りを進めているメンバー。美晴を見つめ菩薩の下書きをするアキオ。

・7月20日。アートプロジェクト最初のピクニック。冒頭とは別人のような優しい青年の千葉。メンバーも和気藹々とした雰囲気だった中、ピクニックにて犬飼の作品が全否定され失格となる。クラマに犬飼の作品について感想を求められ嘘をついて否定の意見を言ってしまう千葉。心が痛むことをいっぱいしないとアートは作れないと言うカナ。

<チャプター1の映像>校庭でみんなが仲良さそうに遊んでいるシーン。はにかみつつも切なげな表情の千葉の写真を撮るカナ。

・アートプロジェクト初日。続々と集まるメンバー。クラマが一人になったときに現れる千葉。千葉にストレンジフルーツを作れと命じて去るサクマ。カナには心臓に疾患があり余命いくばくもない。それゆえ愛する千葉と最後を過ごそうとこのプロジェクトに参加していた。最初はそれを受け入れることが出来ない千葉。同じアーティストとしてカナの才能に嫉妬しつつも、それ以上にカナを愛する千葉。決断し最後までカナを映像に残すためカメラをセットし「アクション!」と叫ぶ。


前半は仲間を裏切り蹴落とし、人間のエゴみたいなのが全面に出てて、小劇場でよくある系統の話しだなーと思って見てたんですが、最後のシーンのカナと千葉がもうびっくりするくらいにラブストーリーであれれ??ってなっちゃいました。もうはんりゅーかケータイ小説家ってくらいの悲恋モノ。それが分かったところで終わるのである意味すっきりしてるんですけど、でもこれ逆再生だから本来なら冒頭のカナが死んだあと、ストレンジフルーツになったカナをみんなが見るシーンが最後なんですよね。私は千葉とカナの過去が分かったところで冒頭に戻ると思ってたから、えええーーーここで投げちゃうの?!!ってのでびっくり。逆再生にした意味がないよー。同じ投げっぱなしにするんだったら、普通に時系列通りにして千葉が狂人になってカナをストレンジフルーツにして終わった方が良かったと思うんだけどなぁ。最後に「究極のラブストーリーだったんです!」って言いきられて終わられても・・・。なんだかごまかされた感がものすごいんです。だって結局アートプロジェクトは千葉がカナでストレンジフルーツを作るだけの狂人になるために集められたメンバでしなかないわけで、全員クラマに踊らされただけでしょ。余命いくばくもなく才能の限界が見えてたカナが千葉に自分を刻み込むために仕組んだとも言えるし。しかもクラマはああやって屍のように生きているけど、千葉は恐らくカナを見送った後、自分も死ぬと思うんですよね。だから最初の方で27歳で悪魔に魂を売って才能を開花させたミュージシャンの話しが出てくるんだろうし。全ての理由を「だってアートだから!」ってことにするのも独りよがりなだけに思えるんですけど。
逆再生の映像や音楽は良かったけど、のっけから首つった女の子がブラブラしてる場面が5分くらいあるって、ここはスズナリですか?って思っちゃいましたよ。スズナリで見ても個人的には好きじゃない話しだけど。
あと気になったのが犬飼のキャラが妙にフィッシュマンズの佐藤くんぽかったこと。ライブ中の佐藤くんってあんな感じの人だったし見た目もちょっと佐藤くんっぽいし、彼を参考にしたキャラなのかなと予想してます。そこも個人的にはちょっとイヤだったんですよね。リアルタイムでフィッシュマンズを長年追いかけていたファンとしてはこんな風に佐藤くんが使われるなんて。いや私の勝手な想像ではあるんですが。
ストーリーに関しては好きになれないけど、ノボルの呪縛に捕らわれていたますだにはこの役が来てほんっとうに良かったと全力で思っていますよ!!冒頭からキレてプロジェクトメンバーを罵りまくる千葉。そこにはいつも柔らかで可愛いと形容されることが多いますださんはいませんでした。元来吊り目なのでにらむと怖いって前々から思ってたけど、その吊り目が最大限に生かされてましたよ!!ますださんキレキレやんー!と小喜びしたいくらい迫力のある千葉がそこに居ました。声の出し方もテゴマスで培ってきたものがしっかり生かされてたと思いました。
雨森は今でも大好きな舞台だけど、あれのせいで妙に可愛こぶった演技が抜けず、前回の灰カナでもやっぱりそれが出てしまってたので、これはもう相当な荒治療が必要だなーと思ってたところに来たこの舞台。以前ドラマで斜に構えた高校生役をやってましたけど、あれも結局は可愛かったしコメディでしたしね。やっと真逆の役を演じることが出来て本当に良かった!そして演技自体も狂人じみた千葉をしっかり演じてステップアップ出来てて本当にうれしかったー!!
とは言えバタバタ走るところや、ちょっと気弱になる犬飼とのエピのあたりはやっぱり肩が上がっちゃう癖が出てて苦笑だったけど。でも気になったのはそれくらいかなぁ。最後のカナとのシーンも切なさと気迫が凄く伝わって来て「何このはんりゅードラマ張りの悲恋モノ・・・」と思いつつもホロリときましたもん。もう千葉のセリフと仕草と言い回しがカナが好きでどうしようもない気持ちを持て余してる感じが凄く出てて、こんなセリフや仕草をあのますだがするなんて!!ってところで萌えまくりです。あんなにお互いに強く想い想われてたらそりゃこんなプロジェクトも参加しちゃうよねぇ!!なんて。こんなラブストーリーをますだがTVですることはないでしょうし、この舞台も映像には残らないのがとっても残念。雨森も映像化して欲しい作品だけど、これも同じくらい映像にして欲しい作品でした。
この舞台が終わって次に演技の仕事が来たときに、この舞台で得たものをどう生かしてくるかが今から楽しみで仕方ありません。舞台とTVや映画はまた演じ方が全然違うから、そこも切り分けられるようになっているといいなぁ。ま、それくらい一気に欲張りになってしまうような出来でした。これが舞台後半になると更にどうなって行くのかな。最後の最後までは見届けられないけど、運よくこの後も見る機会があるので進化を見るのが楽しみです。あとカテコもw